「アリス殺し」あらすじ・感想・考察 ※ネタバレ注意 | LI techno  

「アリス殺し」あらすじ・感想・考察 ※ネタバレ注意

 小林泰三さんの「アリス殺し」についてのあらすじや感想・考察について書いていこうと思います。
※このページには重大なネタバレが含まれていますので気を付けてください!話の全編にかかわるネタバレです。読み終わるまではネタバレを読まないでください。

「アリス殺し」あらすじ

大学院生の栗栖川亜理は、ふと不思議の国の住民になる夢をいつも見ていることに気づく。同時に、井森も同じように不思議の国の夢を見ていた。栗栖川と井森は、不思議の国でハンプティダンプティが塀の上から墜落死する夢を見る。すると現実の世界では、大学の博士研究員が屋上から墜落死していた。その研究員は丸々と太っていて、あだ名も「玉子」と呼ばれていた。つまり、ハンプティダンプティ=玉子である。
栗栖川が次に、不思議の国でグリフォンが牡蠣を食べて窒息死する夢を見ると、現実の世界では大学の教授が牡蠣を食べて中毒死する。不思議の国と現実の世界がリンクしていることに気づいた栗栖川と井森。すると、不思議の国で白兎が犯人はアリスだ、と目撃情報を語り、アリスが殺人犯としての容疑をかけられる。栗栖川亜理=アリスなので、死刑になれば現実世界の栗栖川も死んでしまうことになるため、井森と栗栖川は真犯人を見つけるために調査を開始する。

 

作者

小林泰三(こばやしやすみ)さん。第2回日本ホラー小説大賞を受賞した「玩具修理者」でデビュー、他にも「海を見る人」「ウルトラマンF」などを書いています。SFホラー・ミステリーの鬼才で、この小説のテイストが好きな方は他の作品もほとんど好きになるでしょう。結構グロいので、苦手な方は気をつけてください。下記リンクは小林泰三さんの本人のtwitterです。

 

登場人物・用語説明

アーヴァタール
アバターといった方が分かりやすいかもしれません。現実世界の人物と不思議の国でリンクしている人物のこと。例えば、蜥蜴のビルは井森のアーヴァタール(アバター)で、ハンプティダンプティは王子玉男のアーヴァタール(アバター)です。アーヴァタールは必ずしも現実世界の性格や性別、容姿が同じとは限りません。ただ、アーヴァタールと現実世界の人物は記憶がリンクしているのは確定のようです。アーヴァタールが殺されると、現実世界の人物も死亡してしまいます。

栗栖川亜理(くりすがわあり)
本作の主人公。不思議の国でのハンプティダンプティとグリフォン殺しの容疑をかけられて死刑にされそうになる。ペットのハムスター、ハム美を飼っている。
アーヴァタールはアリス出、ポケットの中に常にいるの眠りネズミに話しかけるのが日課。

井森健(いもりけん)
栗栖川の同級生。現実世界では頭がよく、真犯人への糸口を最初につかむ。
不思議の国では蜥蜴のビルとして活動している。大変頭が悪く、アリスのアリバイを証明できる唯一の人物だったにもかかわらず事件に関することをすべて忘れてしまったためアリスが疑われてしまう。また、グリフォン殺害犯の唯一の目撃者を食べてしまうという愚行を犯し、さらに事態をややこしくする。本人はアリスの味方のつもりである。

王子玉男(おうじたまお)
丸々と太っているので「玉子」と呼ばれていた。
アーヴァタールであるハンプティダンプティが殺されたことにより現実世界でも死んでしまう。

田中奈緒(たなかなお)
栗栖川の大学の先輩。
不思議の国では白兎として活動している。目が悪く、人を判別する際に匂いで判断する。アリスとメアリーアンの匂いが似ているためメアリーアンのことをずっと栗栖川のアーヴァタールだと思っていた。

篠崎教授
栗栖川の大学の教授。現実世界で牡蠣を食べ、中毒死したことでアーヴァタールがグリフォンだと判明する。

広山衡子(准教授)
篠崎教授の下で働いている。准教授。わがままで自己中心的。助教授の田畑に自分の仕事を押し付けたり、無理難題を吹っかけたりとパワハラをしている。
不思議の国では、侯爵夫人(自称)。

田畑順二
助教授で、広山准教授に資料作成や実験、校舎の点検などすべて押し付けられている。広山准教授は頭が悪いので、田畑が研究資料を作っても「自分に理解できないから」という理由で何度も作り直しを要求されたり、期限が明日の実験を到底不可能だが無理やりさせられたりとパワハラを受けている。
アーヴァタールはドードー。

谷丸警部
警部。栗栖川や井森に接近し、不思議の国での二人のアーヴァタールを探っている。
アーヴァタールは最後に判明する。(ネタバレへ)

西中島刑事
谷丸警部の部下。
アーヴァタールは最後に判明する。

ハム美
栗栖川亜理が現実世界で飼っているハムスター。

 

結末・ネタバレ

犯人は広山准教授です。広山准教授は、自分を「侯爵夫人」だと偽っていましたが、実は彼女のアーヴァタールは「メアリーアン」でした。彼女は不思議の国でアーヴァタールを殺せば、現実世界で逮捕されることなく気に入らない人物を排除できることにいち早く気づきました。田中奈緒の発言によって奈緒が栗栖川亜理のことをずっとメアリーアンだと勘違いしていたことが判明します。白兎は視力が弱く、人物を体臭でしか判断できません。そのため、体臭の似ているアリスとメアリーアンをずっと勘違いしていたのです。アリスがハンプティダンプティの殺害犯だと証言したのも勘違いによるもので、ハンプティダンプティを殺した際にハンプティダンプティも近くにいたのはメアリーアンでした。このことから、メアリーアンが犯人だと判明し、広山准教授は現実の世界で自殺します。

栗栖川は一命をとりとめたように思えましたが、なんと自殺したはずの広山准教授のアーヴァタールであるメアリーアンは不思議の国で生きており、真相を知っている栗栖川もろともアリスを殺そうとします(実は、現実世界の方が夢の世界で、不思議の国が本当の世界だったのです。なので、夢の中で広山准教授が死んでも本体のメアリーアンは死ななかったのです)。殺される間際、アリスはポケットの中の眠りネズミをこっそりと逃がします。

 

実は、栗栖川亜理のアーヴァタールはアリスではなく眠りネズミで、ペットのハム美がアリスだったのです。(ここがラストになるまでミスリードさせるような巧みな描写なので、私は一切気づきませんでしたが、注意深く栗栖川のセリフを読むと確かに!と感じます。)

 

不思議の国でなんとかメアリーアンから逃げられた眠りネズミ(栗栖川亜理)は、地球で広山教授の前に現れます。また、谷丸警部と西中島刑事が現れ、自分たちは不思議の国では女王と公爵夫人であると明かします。自らを公爵夫人と偽っていた広山教授は、女王にその犯行を知られてしまい、不思議の国の世界で残酷に処刑されました。

また、メアリーアン(広山教授)が暴れまわったことによって、赤の女王・レッドキングが夢から目覚めます。地球は、全てレッドキングの夢だったのです。

感想

小林泰三さんワールドが炸裂していて大変面白かったです。最初から最後まで飽きることなくドキドキさせられました。登場人物も魅力的でした。現実の世界では頭が大変いいのに、不思議の国ではポンコツ過ぎて捜査を難航させるような行動ばかりとる蜥蜴のビル。目が悪く、アリスとメアリーアンを勘違いしている白兎。要所要所にミスリードさせるトリックが仕掛けられており、最後まで全く気付かずに読んでしまいました。〇〇殺しシリーズを全部読んでみたくなりましたね!

2 COMMENTS

匿名

1番最後に
おはよう、アリス
とありますがアリスは死んだのでは?と思ったのですがどういう意味ですかね

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LItechno_L

お返事遅くなり申し訳ありません。
コメントありがとうございます。

そこは考察が分かれるところで、私もいくつか解釈を持っています。

作中で、赤の王が目覚めるために不思議の国の世界が崩壊していきます。そこで「おはよう」と声をかける対象は、赤の王しかいません。
つまり、レッドキング=アリスだったのでは?
作中で何度か仮想現実とコンピュータ、そして人間の脳なら仮想現実を創り得るという話に触れられていました。
なので、陳腐な考察になってしまうのですが、すべてはアリスの夢オチだった、ということでしょうか。原作と同じラストですね。
人間の世界と不思議の国どちらも仮想現実であれば、アリスが死んだということも関係ないですね。

もう一つ、「おはよう、アリス」ということは、レッドキングがまた眠りについて、アリス達の世界が回りだしたということではないでしょうか。
アリスたちはもしかしたら何度もレッドキングの夢の中で何度も同じ行動をして、何度も死んだりしているのかもしれないと考えると闇が深いですね。そして、彼らはそのことを覚えていない。
人間の世界の住人が死んでも生き返ったのと同じように、レッドキングの夢ではアリスという存在が死んでもその世界ではいなくなるかもしれませんが、次の夢では生き返っている、ということなのでしょうか。

もしかしたらミステリアスさを演出するためにわざと曖昧な言葉を使って終わらせているかもしれませんね。他にも小林泰三さんの作品でミステリアスで意識が混濁したような雰囲気で終わる作品も多いですから。

乱文失礼いたしました。
またこのサイトを見ていただけると幸いです。

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