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アリス殺しに続く「〇〇殺し」シリーズ、第2弾!今回は「クララ殺し」です。
作者
小林泰三(こばやしやすみ)さん。第2回日本ホラー小説大賞を受賞した「玩具修理者」でデビュー、他にも「海を見る人」「ウルトラマンF」などを書いています。SFホラー・ミステリーの鬼才で、この小説のテイストが好きな方は他の作品もほとんど好きになるでしょう。結構グロいので、苦手な方は気をつけてください。
世界観
前作の「アリス殺し」では、不思議の国と地球がリンクしていましたが、今回は「ホフマン宇宙」と地球がリンクしています。ホフマン宇宙に住んでいる人たち(人ではない動物や、オートマータなども生活していますが)の一部は、地球に自分の分身である「アーヴァタール」(アバター)を持っており、記憶を共有しています。あくまで地球は夢の世界であり、ホフマン宇宙が基準となっているようです。
ホフマン宇宙である人物が殺されると、その人物の地球に存在するアーヴァタールも死んでしまいますが、地球でその人物が殺されても、ホフマン宇宙のその人物は死なず、地球上の彼も復活します(他人に気付かれない形で)。ホフマン宇宙の人物をゲームを操作する人、地球上の人物をゲーム内のキャラクターととらえればわかりやすいでしょう。地球上のキャラクターは本体が死ななければ何度でも復活します。
あらすじ
不思議の国の住人である蜥蜴のビルは、ある日突然違う世界に迷い込んでしまう。そこは、ホフマン宇宙という世界であった。ビルはそこでクララという少女と出会う。クララは、殺害予告に悩まされているという。クララの叔父であるドロッセルマイアー判事が蜥蜴のビルをクララ殺害予告事件を調査する探偵に任命し、その補佐をマドモワゼル・ド・スキュデリが務めることになる。
しかし、事件調査中に、クララの地球でのアーヴァタールである露天くららが殺害されてしまう。ホフマン宇宙でもクララが行方不明になったため、誰もが犯行はホフマン宇宙で行われたと考える。怒ったドロッセルマイアーは、クララ殺害の犯人を見つけないとビルを殺すと宣言。
しかし、くららが地球で殺されたとき、ホフマン宇宙ではカーニバルがあり、容疑者はほとんど山車に乗っていたため、全員完璧なアリバイがあった。
登場人物・用語
ホフマン宇宙
19世紀のドイツの作家、エルンスト・テオドール・アマデウス・ホフマンの小説をモチーフにした世界。人間だけでなく、妖精、オートマータ、人形、爬虫類などが暮らしている。
蜥蜴のビル(ホフマン宇宙)
不思議の国の住人だったが、ホフマン宇宙に迷い込んでしまった。とても頭が悪い。地球の井森と記憶を共有している。
井森健(地球)
大学院生。頭脳明晰で、冷静。蜥蜴のビルの地球でのアーヴァタール(ビルと記憶を共有している)。
クララ(ホフマン宇宙)
ホフマン宇宙の住人。殺害予告に悩まされている。
露天くらら(地球)
地球の住人。殺害予告に悩まされている。クララのアーヴァタール。
ドロッセルマイアー(ホフマン宇宙)
ホフマン宇宙で判事を務めている。
ドロッセルマイアー(地球)
くららの叔父。井森の大学で、教授をしている。ドロッセルマイアーのアーヴァタール。
マリー(ホフマン宇宙)
クララの友人で、人形。
マドモワゼル・ド・スキュデリ(ホフマン宇宙)
利発で頭が切れる老婦人。ビルとともにクララ殺害事件を調査する。
新藤礼都(地球)
井森のクララ/くらら殺しの犯人捜しの手伝いをしている。
解説(ネタバレ注意!!)
アリス殺しでは、オチが明快でわかりやすいトリックだったのに対し、本作は少し難しいトリックが使われていました。通して読んだけど分からなかった、という方のためにわかりやすく説明してみます。
実は、クララと露天くらら、ホフマン宇宙のドロッセルマイアーと地球のドロッセルマイアーは、アーヴァタールの関係ではなかったのです!本当のアーヴァタールの関係は以下の通りです。
ホフマン宇宙 地球のアーヴァタール
ドロッセルマイアー ー 新藤礼都
クララ ー ドロッセルマイアー
マリー ー 露天くらら
スキュデリ夫人が、地球の井森にドロッセルマイアーに鎌をかけるように仕掛けました。案の定、ホフマン宇宙のドロッセルマイアーと地球のドロッセルマイアーは記憶がリンクしておらず、ドロッセルマイアーが嘘をついていたことが発覚しました。
ドロッセルマイアーの本当のアーヴァタールは、新藤礼都だったのです。
マリーは、井森に自分がクララだと思い込ませるため、地球ではクララと似たような恰好をして、車いすに座っていたのです。
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